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ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

子供の頃の「魔法」への憧れが全部詰まった『とんがり帽子のアトリエ』

サブカルチャー サブカルチャー-コミック

とんがり帽子のアトリエ 感想1
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.68より

 これほどまでに「魔法」にわくわくさせられたのは、小学生のころに読んだ『ハリー・ポッターと賢者の石』以来かもしれない。

 生活を便利にする夢のような魔法と、世界を覆う大きな秘密。魔法使いの師弟関係に、これから始まる冒険への期待。そして忘れちゃいけない、「力」としての魔法の負の側面。少年時代にわくわくドキドキさせられた「魔法」の魅力がぜーんぶ詰まった、素敵なマンガでした。

 

「魔法」に憧れる女の子の成長を描く王道ファンタジー

 きっかけは、ずばり「ジャケ買い」でございました。

 繊細でかわいらしいタッチの表紙絵はもちろんのこと、なによりタイトルにビビッときた。だって、今日び『ファイナルファンタジー』でも見なくなった “とんがり帽子” っすよ!

 魔法使い(魔女)のトレードマークである “帽子” をタイトルに冠しながら、かと言って見慣れた黒の三角帽子+黒ローブというわけでもないビジュアル。どこかやさしげな色合いに導かれるように、次の瞬間にはポチってしまっている僕がいた。Kindleストアでポイント還元もあったし!

 ――で、実際に読んでみた読後感が、冒頭にも書いた “ポッター以来” 。広義の「ファンタジー」に分類されるマンガは少なからず読んだことがあるけれど、これほどまでに素直な気持ちでもって「魔法」にわくわくさせられたのはひさしぶり。すぐにでも続きを読みたい、少しでも長くこの世界に浸っていないのに、まだ1巻が出たばかりという……。うごごごご!

とんがり帽子のアトリエ 感想2
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.3より

 さて、本作『とんがり帽子のアトリエ』における「魔法」は、一般の人間にもそれなりに日常的な存在でありながら、限られた魔法使いしか使うことのできない「神秘」として描かれています。

 魔法を使えるのは、「魔法使い」の家系の人間だけ。魔法を使える人は特別な存在であり、頭にかぶった “とんがり帽子” がトレードマーク。魔法それ自体は、人々の生活を便利にする存在として生活に根ざしてはいるものの、一般人はそれを恵んでもらう側でしかなく、神秘の仕組みは秘匿されている――という、そんな世界。

とんがり帽子のアトリエ 感想3
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.20より

 魔法が当たり前の世界にあって、幼少期からその神秘に憧れ続けている女の子・ココが、本作の主人公。彼女の暮らす村の人たちが「便利だけど身近なもの」として魔法を享受しているように見えるのに対して、それを目の当たりにするだけで興奮して浮足立ってしまう女の子。かわいい。

 そんな彼女はある日、村を訪れた魔法使いが「魔法をかける」瞬間を見てしまう。ありふれた存在でありながら、どういった仕組みなのか、どのように行使されているのかは一般に知らされていない、決して見てはいけない「魔法」の秘密。それを知ってしまったことから、ココの物語は始まる。

 

子供の頃に夢見た「魔法」への、わくわくドキドキを思い出す

 ――といったプロローグで幕を開ける本作。とにもかくにも読み進めるわくわく感がたまらなかったのですが、その一因として、主人公であるココのキャラクター性が挙げられるように感じました。

 まず、前提として彼女が「普通の女の子」であり、かつ「魔法に並々ならぬ憧れを持って」おり、そして「魔法の秘密を知らない」ということ。劇中で語られる世界設定の説明は最小限にとどめられており、読者は彼女の目線で「魔法」に触れ、その「秘密」をも知ることになる。

 結果、第1話のラストでココは「魔法使い」の世界に足を踏み入れることになるのだけれど、その流れと描き方がすごく印象的で秀逸。彼女と共に「見てはいけないもの」を覗きこむドキドキを味わい、「そう来たか!」とその仕組みに納得しつつ、実際にココ自身の手で初めて魔法をかけるまでの展開と、魔法が眼前に現れた瞬間のわくわくがたまらない。

とんがり帽子のアトリエ 感想4
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.46より

 それまで「魔法すごい魔法ヤバい魔法ハァハァ」と興奮気味に語っていた女の子が、己の手でそれに触れた瞬間。どんなファンタジー作品でも「はじめての魔法」はわくわくするものだけれど、本作における “はじめて” は極上でございました。

 しかも、ここで “わくわく” のみならず、秘密を知ったとき以上の “ドキドキ” までもが後についてくるからすばらしい。キラキラ素敵な「魔法」を生み出したように見えて、同時に「いけないことをしている」かのように、続くページでは明暗が描かれていく。そうしてたどり着いた1話ラストで、絶望と希望を彼女は知るわけです。

 紛れもなく「王道ファンタジー」であり、その王道っぷりを全力で味わえる素敵なマンガ。どうも変化球に慣れてしまっていたのか、今の自分にとってはそれこそ少年時代に抱いた「魔法」に対するわくわく感を思い起こさせる、最高に昂ぶる作品でした。映像で見たらどうにかなりそう。

とんがり帽子のアトリエ 感想5
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.115より

 世界の秘密と怖さを知ってなお、魔法に対する憧れを抱き続け、そのわくわくを隠そうともしないココ。それがあまりにも素直でかわいらしいから、読んでいる僕らにまで伝染するのも当然であるように思えてくる。あと、優しいイケメン師匠も好みです。過去に闇を抱えてそうな雰囲気も含めて。

 そうして弟子入りした彼女は、言うまでもなくイレギュラーな存在。ハンデと問題を抱えながらも、知恵と工夫と憧れでもって立ち向かい成長していくさまは、王道ながらやっぱりわくわくせずにはいられない。さらには、緻密な絵柄が作品への没入度を高めてくれているような印象もある。そう考えると、少年時代より前、幼少期に読んだ絵本の “わくわく” にまでつながる部分もあるのかもしれない。

とんがり帽子のアトリエ 感想6
白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』(1) P.169より

 師匠を得て、弟子仲間との交友を深め、これからたくさんの素敵な「魔法」と関わっていく――のかと思いきや、早くも降りかかる試練と「魔法」の負の側面。彼女らがどういった道を歩んでいくのか、続きが楽しみでなりません。

 

 小さな “とんがり帽子” の物語は、まだ始まったばかり。

 

© KAMOME SHIRAHAMA 2017

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