「インド映画はいいぞ」と聞いて『ムトゥ 踊るマハラジャ』を観たら最高に楽しかった


 ここ数年、ネット上で「インド」を目にする機会が増えた(※個人の印象です)。映画ブログでは「ボリウッドはいいぞ」という旨の文章をしばしば読むし、ニコ動では「ナンとカレーな踊り」「ナンにでも合う」タグが今でもそこそこ盛況。そして、カレーはおいちい。

 特に最近だと、Togetterで話題になった「どうしたの大丈夫?踊ろうか?」*1は個人的に、今年の “めっちゃ印象に残ったワンフレーズ・オブ・ザ・イヤー” にノミネートしたいくらい。そんなにも「踊り」が習慣化しているのなら、「べっ、別にあんたのために踊ってるんじゃないだからねっ!」と頬を赤らめながらブレイクダンスする二次元インドっ娘がいてもおかしくないじゃないか。かわいい。

ムトゥ 踊るマハラジャ
映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』より

 しかし一方で、思い返してみると、自分はこれまでに「インド映画」を観たことがない。大学の講義か何かで一場面を観たことくらいはあるかもしれないけれど、少なくとも、映画一本をフルで観た記憶は皆無だ。インド……踊り……動画……ニコニコ……シュタインドゲート……うっ、頭が……*2

 世界に誇る映画大国・インドのイメージの出展が “ニコ動” というのも……我ながら、どうかと思う。――となれば、自分としては珍しく新作映画もたくさん観ている “映画年” である2016年が終わる前に、新規開拓としてマサラムービーに触れておきたいところ。レッツ、インド。

 そんなことを考えていたら、某レンタルショップからちょうどタイミング良く「更新手続き」のお知らせが届いた。会員登録を更新すれば、過去作品が1本無料。――これは借りてくるしかない! ということで探してきて、一気に観ました、『ムトゥ 踊るマハラジャ』。ヒーハー!

 

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長いようで短い、いろいろな要素がたっぷりの166分間

 正直なところ、いざ借りてきて、ディスクに書かれている文字を読んだ瞬間は、軽く後悔した。上映時間……166分……だと……。2時間どころか2時間30分を超えるというボリューム感は、自分にとっては決して短くない。そんなに踊りまくってるのか……インドやべえ……。

 ところがぎっちょん。実際に見始めてみると、全くダレないし、飽きない。

 ここ数ヶ月で観た作品でいえば、『シン・ゴジラ』のように息もつかせぬ展開かというとそうでもなく、『君の名は。』のように音楽と合わせてテンポの良い構成かというとまた違う。しっかりと “長さ” は感じつつも、それでも最後まで飽きずに観ることのできる、楽しい映画でした。

ムトゥ 踊るマハラジャ
思わず口ずさみたくなる音楽に、踊りたくなるダンス。混ざりたい。

 登場人物同士の軽妙なやり取りが続いたかと思いきや、突如として始まるミュージカルシーン。

 ちょっとしたアクションに爽快さを感じていたら、わぁいまた踊りだしたぞぉ! からの逃避行、ロードムービーっぽい展開を経て、やったぜイチャコラメロドラマ! いいぞもっとやれ――からの、約束された舞踊と歌(ミュージカリバー)いいぞ、もっと踊れ。

 随所でコメディを挟みつつ、コンチクショーなボコられ展開にぐぬぬっていたところ、おっと来ましたシリアスシーン&伏線回収&過去話。ついに明かされる真実に、やぁやぁ最終決戦だ! キレッキレなダンス……じゃなくて殺陣に惚れ惚れし、生きとったんかワレ! からの大団円ダンス。――なんかもうすっげえ! お腹いっぱいでもう踊れないよママン!

ムトゥ 踊るマハラジャ
老若男女が入り乱れたミュージカルシーンは超楽しい。

 「マサラムービー」の特色をそもそも知らず、「インド映画? 歌って踊るんでしょ?」くらいのイメージしか自分は持っていなかったので、予想外の “エンタメ作品要素” の盛り盛り具合に面食らったのでした。言うなれば、 “シリアスにならざるをえない要素以外全部盛り” 。パねぇ。

 とにかく、観ていて楽しい。それに尽きます。

 完全な「コメディ100%」ではないものの、ほどほどのシリアス具合がスパイスのようにきいていて、鑑賞後のカタルシスも得やすい。ストーリー展開はわかりやすいけれど、「そうやって関わってくるのか!」という驚きも少なからずあっておもしろかったし、どことなくMADに通じそうな音ハメ演出も好み。

ムトゥ 踊るマハラジャ
デレるのは割と一瞬だった。チョロい。

 あと、キャラクター同士のつながりとしてはやはり「男女の恋模様」にフォーカスされてはいるんだけど、男同士の関係性もかなり密に描いているように見えたのが、個人的には好きなポイントでした。使用人と主人、あるいは使用人同士のやり取りとか。

 特に「夜10:00にお庭でデートしましょ♡(※意訳)」のメモが誤って複数人のあいだを行き来し、誤解が積み重なったままそれを読んだ全員が集まった結果、「こんなのデートじゃないわ! ただの主従入り乱れたトンデモかくれんぼよ!(※意訳)からの、大奥様の「だったら踊ればいいじゃない!(※意訳)の一声でミュージカルに切り替わったのは笑った。……なるほど! 歌って踊ればいいのか! たしかにそのとおりだ!(?)

ムトゥ 踊るマハラジャ
この2人の掛け合いがすんごい好きです。

 そして、映画全体を通しておもしろ楽しい展開でありながら、その根底には哲学的な、あるいは教訓じみた道徳の価値観が窺い知れたのも、観ていて印象的なポイントでした。

 世界共通の「正しさ」に言及しつつも、それ以上に「生の喜び」「楽しさ」の要素が前面に押し出されていたという印象。人によっては忌避感を覚える部分かもしれませんが、教訓のなかでもインド文化ならでは(?)の「楽」を感じ取れて、エンディング後はすっきり気持ちよかったです。

 何はともあれ、自身初のインド映画作品となった本作『ムトゥ 踊るマハラジャ』は、想像以上に好印象! 徹頭徹尾おもしろ楽しく、幾度となく声に出して笑いながら観ることができました。他のマサラムービーにも手を出していこうと思うので、おすすめなどあったら教えていただけると嬉しいです。

 

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