『自転車生活の愉しみ』を読んだ感想


 

 読みました。自転車を買う前からちょっとずつ読み進めて、実用的なメンテナンス部分は一部飛ばしつつも、読了。

 登場する自転車用語と実際のパーツが一致せず、かと言って写真や絵図が豊富というわけでもないので、よくわからない部分は流し読みしちゃった。

 とはいえ、そういった箇所はごくわずか。全体として見ると、「初心者向けのハウツー本」というよりは、「これから自転車に乗る人にその魅力を伝えるべくアツく語ったエッセイ本」といった内容。良くも悪くも“おっさん文体”の書き口は軽快で、楽しく読めました。

 

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“自転車ツーキニスト”がアツく語る「自転車」の魅力

 本書の筆者は、“自転車ツーキニスト”として有名な疋田智*1さん。

 自転車で通勤する人を指すこの言葉を広めた張本人であり、会社勤めをしながら自転車の普及活動などにも取り組んでいるとの話。テレビの情報に疎い自分でも聞いたことがあったので、ご存知の方も多いのではないかと。

 

 私が自転車に関わっているのは、ただ単に「毎日、自転車で通勤してまーす」という、それだけなのだ。都内サラリーマンの凡庸なる三四歳男。

 それなのに蛮勇を奮って、あまたの自転車本の上に、さらに一冊を加えようというのは、ただ「自転車の愉しみ」だけは、ひょっとして多くの普通の人よりも若干知っているかな、と思うからだ。自転車の素晴らしさをより多くの「普通の人々」に伝えたいな、という思いだけが執筆の動機なのである。

 

 そんな著者による本書『自転車生活の愉しみ』のテーマは、至極シンプル。「自転車はいいぞ」の一点である。自転車の歴史だとか構造だとか、小難しい話はどれも数行で説明するのみ。一冊を通して、「自転車はこんなにも楽しい!」をアツく語った内容となっています。

 

目次
  • 1章 東京で自転車に乗ること、それと、通勤するということ
  • 2章 さあ始めよう!
  • 3章 自転車を選ぼう
  • 4章 さあ走ろう!(自転車運転術)
  • 5章 自転車と暮らすということ
  • 6章 メンテナンスの基本講座①
  • 7章 メンテナンスの基本②
  • 8章 怒涛のヨーロッパ自転車紀行
  • 9章 ビジョン2010

 

 目次はこんな感じ。

 全9章構成+12本のコラムで構成された一冊となっており――と書くと分厚そうに感じるかもしれませんが、読後感としてはそんなこともなく。前述のとおり「解説」よりもエッセイ調の「自転車語り」に紙面を割いているため、ガンガン読み進めることができました。

 なかでも個人的におもしろかったのは、8章。

 ドイツとオランダの計4都市を実際に巡り、筆者自身の言葉と現地人へのインタビューによって、各地の「自転車事情」を紐解いていく紀行文。

 若干の写真も交えつつ語られる欧州・自転車大国の風景は、「そんなにも違うのか!」と驚かされるばかりでございました。というか自転車関係なく、むっちゃ行ってみたくなった。

 

 他方で気になったのが、9章タイトルの“ビジョン2010”からもわかるとおり、本書が思いのほか昔に書かれた一冊となっていること。

 なんと出版は2001年、15年前とのことで、自然と現在との比較が気になってくるのです。筆者が憂慮していた15年前と比べて、現在はどうなったのか、と。

 

 素人目に見るなら、少なくとも東京都心における「自転車」の存在感は大きくなりつつあるのかな、と思う。

 歩道を分割するのではなく、車道側に自転車レーンを整備した道路も増えてきたし、なによりもコミュニティサイクルのポートをあちこちで見るようになった。僕自身も自転車を買った。

 そのようにあれこれと考えていると必然、筆者の既刊も読みたくなってくるところ。

 と同時に、自分も晴れて自転車に乗るようになったわけだし、実用的な解説部分も参考にしつつ“自転車生活の愉しみ”に浸りたい。そして自分も、「自転車はいいぞ」と自信を持って言えるようになりたい――と、そのように思いました。まずは冬用のウェアを買うべきかしら……。

 

 

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