4507秒の人生を駆け抜ける、世界一長いギネス認定ゲーム音楽


 

 もう6年も使い続けているiPod touch。彼は優秀なので、作業用BGMにするべく適当に作ったプレイリストをシャッフル再生していると、絶妙なタイミングで好きな曲を流してくれるんですよ。

 ピアノ曲を多めに入れているので、基本的には優しい旋律と音色が耳を楽しませてくれる。でも、ずっと同じ曲調だと耳が飽きてくる。そんな、ダレてきたかなーというタイミングで、楽器の数を増やしたインストを流してくれたり、RPGのイベント曲を持ってきてくれたりする。

 かと思いきや、唐突に例の「スネ夫のテーマ曲」を流してくれちゃったり、エヴァンゲリオン旧劇場版の「甘き死よ、来たれ」で作業中にサードインパクトが起こっちゃったりと、ちょっとドジな面もあるんだけど。かわいいヤツめ。……というか、自分の選曲の問題ですね、はい。

 とまあ、そんな作業用BGMの中でも最近、特にお気に入りのCDがあるのです。何度かTwitterで「\( 'ω')/ウオオオオオアアアーーーーッ!!!」なんて吠えていたこともあるし、その界隈では有名な曲なので、ご存知の方も多いとは思いますが、ギネスにも認定された、アレ。

 

 それが、ゲーム『無限回廊 光と影の箱』のサウンドトラックでござる。

 

ギネス認定も受けた、世界一長いゲーム音楽

 

 『無限回廊 光と影の箱』は、2010年にPS3のPlayStationMove専用ソフトとして発売されたパズルゲーム――なのですが、僕自身、ゲームは未プレイでござる。そもそも、PS3を持っていない。

 じゃあどこで本作を知ったのかと言うと、2ちゃんねるのゲーム音楽板で定期開催されているみんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめにて。毎年楽しみにするほどに大好きなこの企画の中で、こちらの曲がランクインしているのを見たのがきっかけとなりました。 

 

prime # 4507

prime # 4507

  • 坂本英城
  • サウンドトラック
  • provided courtesy of iTunes

 

 iTunes Storeで見ればわかるように、本サウンドトラックに収録されているのは、この「prime # 4507」の1曲のみ。ゲーム中で実際に使われているのも、この1曲だけとの話。その長さ、なんと75分7秒。……それだけ聞くと、訳がわからない曲っすね。

 “世界で一番長いゲーム用書き下ろし楽曲”として、ギネス世界記録にも認定されている*1この曲は、バイオリン2本・ビオラ・チェロの弦楽四重奏+ピアノの編成で演奏されております。その長さも含めて「こりゃあ作業用BGMにぴったりだ!」と思い、購入した格好。お世話になってます。

 ところがどっこい。どうしてこんなに長いのかとか、どういった展開の楽曲なのかとかを知ってから聞くと、全く聞こえ方が変わってくるから不思議。最初は「なるほどなるほど〜」なんて頷きながら聞いてたのに、70分後には感動して、軽く泣きそうになってたくらいですしおすし。

 

1分1歳、晩年75歳を迎えるまで、4507秒の人生が奏でられる

坂本氏によると、曲の「分数」を「年齢」に見立てて、「誕生」から「入学」、「就職」、「結婚」といった人生観を描いているという。

例えば「誕生」は赤ん坊が元気に生まれるので、曲も明るく元気に始まるなど人生の出来事をこの楽曲で表現している。

最後の部分の「晩年」になると、子供の頃の感覚に戻っていく「回帰」に入っていく。

よって曲の最後と最初は、違和感がないようにループできるように、テンポもキーも同じものになっている。

 

 作曲者・坂本英城さんへのインタビューによれば、こういうことだそうな。楽曲の「1分」を「1歳」と見立てて、ヒトの人生の「75歳」までを「75分」で奏であげた1曲である、と。楽曲ひとつで“人生”を描き出すという、物語性に溢れまくった音楽作品でございます。なにこれすげえ。

 当初は「さすがに75分も聞いてりゃ飽きるべさ〜?」と思っていたけれど、驚いたことに、最後まで一瞬たりとも「退屈だ」と感じることなく、75分間を駆け抜けることができてしまった。終盤はもうアカンですよ。涙ちょちょぎれっすよ。\(`;ω;´)/ウオオオオオアアアーーーーッ!!!

 

 最初の5分は、ぽっと音が飛び出てきて、明るく元気な曲調で始まり、
 10歳になるまでは、一歩一歩踏みしめるような、刻まれたリズムが印象的で、
 思春期を迎えると、思いのほか穏やかな、恋と成長を感じられる弦の音色があり、
 20歳前後になれば、途端に慌ただしく、不安ながらも加速する旋律が反響する――。

 

 ――といったように、あれこれと想像しながらメロディを楽しむことができて、気づけばあっという間におじいちゃんですよ。てっきり最後は静かにフェードアウトしていくのかと思いきや、69歳あたりで上で書かれている「回帰」のパートへ。

 随分前に聞いたメロディに戻り、そろそろ終わりかと考えた途端、逆に不安を煽るような展開に。もう時間ないよ! どうすんの! このままポックリ逝っちゃうの! ……と思っていたら、最後の最後で“あの音色”ですよ。\(´;ω;`)/うおおおおおあああ…………。

 

 ゲームをプレイしていないにも関わらず、ここまで音楽単体で心を動かされたるようなことは、なかなかあるもんじゃないでしょう。具体的には、過去に3回あったか、なかったかのレベル。

 iTunes Storeで1,500円でポチって、お値段以上の満足感。作業用BGMとして使いつつ、それ以外の場面でも聴きたくなる、大好きな1曲となりました。「10年後、20年後に聞いたら、またちょっと印象が変わったりするのかな?」という期待も抱きつつ、これからもお世話になります。

 

 

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