小林幸子さんとニコニコ動画と「千本桜」(と紅白歌合戦)


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出場歌手・曲目|第66回NHK紅白歌合戦

 「第66回NHK紅白歌合戦」の曲目が発表されたそうな。BUMPは何を歌うんだろうなーと見に行ってみたら、それよりも最下部に目を奪われた。小林のさっちゃん、マジで「千本桜」を歌うんか! うっほー!

 ニコ厨には言うまでもなく、小林幸子さんがニコニコ動画で「歌い手」として動画を投稿していることは、ネット上では有名な話。

 ですがその辺りの話題に疎い人に聞いてみると、楽曲としての「千本桜」は当然わからず、「小林幸子」と「ネット動画」のつながりにもピンと来ないとのこと。……そりゃそうだ。複数のテレビ番組で話題になったならいざ知らず。

 そんなわけで、小林幸子さんとインターネット――もとい「ニコニコ動画」、そして「千本桜」との関係性について、ざっくりとまとめてみました。

 

「千本桜」ってなんぞ?

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『初音ミク』千本桜『オリジナル曲PV』 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 2011年9月、ニコニコ動画に投稿された「千本桜」は、黒うさP(Whiteflame)の楽曲。若者にしばしば好まれるとも言われている和風ロックのサウンドと、PVでも描かれている大正浪漫な世界観が特徴の、ボーカロイドオリジナル曲です*1

 元動画の“970万”という再生回数も驚きですが、2013年デビューの「和楽器バンド」によるカバー版*2はYouTubeで3000万再生を超えるなど、関連動画を含めれば途方もない人気ぶりが窺える一曲。JOYSOUNDのカラオケ年間ランキングでは2012年以降、全ジャンル総合で毎年ベスト10以内にランクインしており*3、ネットは見ない人でも「カラオケで見た(聞いた)ことがある」という人も少なくないのではないかしら。

 そのほかの露出としては、2013年に小説版がオリコン文芸部門1位を獲得したり*4ミュージカル化されたり*5、各種音楽ゲームに収録されたりするなど、メディアミックスは多岐にわたります。テレビ方面では2013年、トヨタ「アクア」のCMに採用され、まらしぃ*6さんのピアノ演奏版が話題となりました*7

 簡単にまとめると、「千本桜」はネット上での発表から4年、あれやこれやとさまざまな場面で使われ演奏される大人気曲であり、一面的には「ボーカロイド・初音ミクの代表曲のひとつである」と言っても過言ではないようにも思います。一概にはそうとも言えませんが、抜群の知名度を誇ることは間違いないでしょう。

 

小林幸子さんとニコニコ動画

 一方で、小林幸子さんと言えばもはや説明不要の大演歌歌手でございますが、紅白歌合戦における美川憲一さんとの「衣装対決」のイメージが強い人も多いのではないかと。

 その圧倒的な出で立ちから「ラスボス」とも称されてきた幸子さんが、動画投稿サイト「ニコニコ動画」に“降臨”したのは、「千本桜」から遅れること2年、2013年9月のことでございました。

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【初投稿】ぼくとわたしとニコニコ動画を夏感満載で歌ってみた【幸子】 ‐ ニコニコ動画:GINZA

はじめまして^^
小林幸子と申します(はぁと)

 ――口調は柔らかいのに、この圧倒的な存在感。まさしく“ラスボス”である。案の定、動画中でもドデカイ衣装を身にまとい、もうわけがわからないよ……。

 もともと、2012年頃から何度かニコニコ生放送に出演したり、関連イベントに“降臨”したりするなどしていた幸子さん。2014、2015年には立て続けにコミックマーケットに参戦し、自ら手売りでCDを渡しておりました。――並んだけど売り切れでした、はい。

 さらに2015年夏には、「ボーカロイドの曲を自ら歌う」だけでは終わらず、「自分がボーカロイドになる」という事態にまで発展。国内最高峰の演歌歌手が、電子音声とまさかのコラボレーション。発売の際には、デュエット曲まで投稿しています。

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VOCALOID4 Library Sachiko

 日本音楽界の超大御所がネットカルチャーに歩み寄ってきたと思ったら、気づいたらご本人自らがネットカルチャーと同化していたという超展開。

 RPGだったら、戦うべき相手であるラスボスがいつの間にか仲間になっていたという平和で優しい世界である。……まったく、どうかしてるぜ!(絶賛)

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【小林幸子とSachiko】脳漿炸裂バーサン 歌ってみた ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

小林幸子さんと「千本桜」

 幸子さんが「千本桜」を初めて公の場で歌ったのは、おそらく2013年末の年越し生放送でのこと。ダイオウグソクムシ先輩によるオープニングアクトで充分に場が暖まったところ、満を持しての降臨&歌唱でございました。「風といっしょに」も最高だったよ!

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ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE - ニコニコ生放送

 「“あの小林幸子”がニコ動に動画を投稿した、しかもボーカロイドオリジナル曲を歌っている」という時点から、ある程度は期待されていた楽曲だったのではないかと思います。いつか、「千本桜」を歌ってくれるんじゃなかろうか――と。

 その期待はわずか3ヶ月で現実のものとなり、2014年夏のコミックマーケット86では音源が収録されたCDも頒布*8。10月にはネット上でも公開され*9、文字どおりプロに“歌っていただいた”、持ち歌となった格好です。

 

 そして冒頭のニュース、2015年末、なんとあの「紅白歌合戦」で、「小林幸子」さんが、「千本桜」を歌うとの発表でございますよ。

 昨年出場したLinked HorizonのRevo*10さんは「コミケから紅白へ」だったけれど、幸子さんは「紅白からコミケへ、そしてまた紅白へ」という流れでもって戻ってくるのが象徴的だし、なんだか感慨深くもあります。「ネットカルチャー」という文脈の企画での出場となる今回の紅白は、一人の「ネット好き」としても見逃せないなー、と。まあそんな特別なことはやらないでしょうが。

 

 いちオタクとしては、数年前には「奈々様*11が紅白出場とかマジで!?」なんて興奮していたような記憶もありますが、今年はμ'sあり、BUMPあり、そして4年連続女々しくて辛そうな金爆ありと、意外にも放送が楽しみでござる。あとは、同じく特別枠のMISIAに浄化されそう。

 放送までは残り10日……ということは、今年も残すところあと10日。たまの年末はテレビの前で、うどんを啜りながら馴染みの曲を聞いて、年を越しませう。なんかいろいろな意味で“複雑”な気持ちになりそうだけど。ぼくは、カーチャンの生暖かい視線と戦うよ。

 

 

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