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ぐるりみち。

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大きな「システム」と「人」のコラボ『Amazonの3.11』

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http://www.flickr.com/photos/14064991@N04/3876769226
photo by sⓘndy°

 

 『Amazonの3.11』を読みました。

 GoogleにNHKなど、震災時には各企業・団体がそれぞれの分野から被災地の支援に取り組んでいましたが、Amazonもそのひとつ。Amazonと言えば、既にほぼ完成された巨大な「システム」の上で成り立っているサービスという印象が強かったけれど、そのイメージが軽く変わりました。

 本書でまとめられている記録からは、そこに携わっている「社員」や「他企業」、さらには一般の「個人」の力が読み取れる。もはや当たり前に使いすぎていて忘れがちだけれど、商品をひとつ買うにしても、それを作った人がいて、仲介してくれる企業の存在があって、それを届けてくれる人もいて……と、複数の人が関わっている。そんなことを、思い出させてくれました。

 

既存のシステムを別の使い道に応用する

ほしい物リストは、日本では自分が購入を検討している商品を記録しておくという、備忘録的な使い方をされているケースがよく見られるが、アメリカでは、誕生日や出産などのプレゼントに希望する商品を登録しておき、それを見た友人や家族が注文をするという使い方が一般的だ。いわば、プレゼントをする人ともらう人のミスマッチを防ぐためのサービスだ。注目のポイントは、ここ。ほしい物リストを利用することで、受け取る人は自分の希望と寸分違わぬ物が手元に届く。まさに、災害発生時の物資支援に最適のサービスだ。

 

 Amazonの「ほしい物リスト」と言えば、個人的にはちょっと前に誕生日プレゼントを贈ってもらえたこともあり、その素晴らしさをこの身を持って実感したばかり。

 名前が示すとおり、基本的には「ほしい物」を登録して個人的に使うか、あるいは親しい相手とのプレゼントのやり取りに利用するのが主な使い方と言えるでしょう。本来ならそれ以上でもそれ以下でもないはずだったこの機能が、震災時に役立った、という話。

 

 

 現在もなお、継続運用中のこちらのページ。このページと仕組みができあがるまでに、多くの人の努力と積み重ねがあったということが、本書には記録されています。

 

アイデアと、個人と、企業と、つながりと

 きっかけのひとつとなったのが、こちらのツイート。

 

 

 

 ざっくりとした過程はTogetterにもまとめられていますが、Amazonの「中の人」でもあった渡辺さんが、具体的にどのように各所と連絡を取り、仕組みづくりを進めていったのかが、本の中ではまとめられておりました。その部分が本書の肝なので、ぜひ読んでいただければ、と。20、30分ほどで読める、短い本なので。

 

 避難所への荷物の配送は、ヤマト運輸の努力の結晶だった。避難所は個人の自宅ではない。体育館や公民館、市役所など、公共性の高い建物に、多くの人が避難して、生活をしている場所だ。見方を変えれば、一つの大きな家に、複数の家族が住んでいるようなものだといえる。配送人からすると、特定の人にどうやって荷物を届ければいいのかがわからない。

 その問題を解決したのは、非常にシンプルかつ地道な方法だ。避難所へと運んだ荷物を荷受人に直接渡すため、宛先人を一人ずつ呼び出すというものだった。不在の場合には、携帯電話で呼び出したり、信頼できる管理人がいる避難所では管理人に荷物を預けたりという方法をとった。手間のかかるサービスを、ヤマト運輸は丁寧に提供していたのだ。

 

 ひとつ、引用させていただくとすれば、序盤に書かれているヤマト運輸の活動。物流企業としてAmazonの取り組みを可能にしたものですが、Amazon側の仕組みづくりも、割とこの話に近い。

 現地と連絡を取り、被災地のニーズを把握し、それを手作業でリスト化し、求めている人の元へしっかりと届くようにする作業。Amazonの既存のシステムが根っこの部分にありながらも、それを「震災」という非常時に使えるように最適化したのは、他ならない「」の手によるものでした。

 

 ほしい物リストを活用した物資の支援は、震災発生から約1か月が経過した4月9日から始まり、2013年2月現在も続いている。この期間、被災者たちはそのときに自分たちが必要としているもの、あったらうれしい物を追加してきた。見方を変えれば、このデータは、これから同規模の震災が万が一発生してしまった場合の貴重なデータとなるだろう。

 震災発生から1か月ではどんな物が求められるのか、夏に必要な物、秋に必要な物など、季節ごとに求められる物資がわかるはずだ。

 また、揺れによって被害を受けた地域、津波の被害にあった地域、原発事故の影響を強く受けた地域によって必要な物資も大きく変わってくる。そのニーズを的確に把握するのに役立つデータとなるだろう。

 

 さらに、この過程で得られた経験とデータが、「これから」にも役立つであろう点の指摘には唸らされた。このAmazonの取り組みに限らず、今ある便利なものはすべて、過去の積み重ねによるものなんだなーと。当たり前のことだけれど、普段は忘れがちなそんなことを、再認識させてくれるものでした。

 

 

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