『アニメを仕事に!』中表紙。
今期のアニメは、『SHIROBAKO』が毎週とっても楽しみ。みゃーもりかわいい。
ある意味、「社会人あるある」「会社あるある」としても胃が痛くなりs……楽しめそうな作品だけど、何より、これまで全く知らなかった「アニメ制作」の現場が(創作とは言え)見られるのはおもしろい。
放映済みの3話までの内容としては、アニメ制作の中でも「制作進行」にスポットが当てられています。――そう、制作進行と言えば、ちょっと前にその仕事ぶりを記した本が発売されて、一部で話題となっておりました。
アニメ制作会社TRIGGER*1取締役の舛本和也(@kenji2413)さんによる、アニメ業界の仕事の一端を書き記した本。サブタイトルにもある通り、 “アニメ制作進行読本” という表現がとてもしっくりくる内容でした。
そんなわけで本記事では、本書『アニメを仕事に!』の紹介をしつつ、アニメ『SHIROBAKO』についても触れながら、簡単にまとめてみました。
「制作進行」って、どんな仕事?
目が死んでる……。/『SHIROBAKO』第1話 ‐ ニコニコ動画:GINZA
そもそも、「制作進行」ってなんじゃらほい?
本書の冒頭ではネットの説明を参照して、次のようにまとめています。
「制作進行とはスケジュールを管理して、お金やスタッフを調整し、作品を作るサポートをする役職。納品に間に合わせるため、連日の徹夜や、各スタッフへの交渉を行う、非常につらい仕事。やめていく人間も多い。」
『SHIROBAKO』を3話まで観た限りでも、印象としてはだいたい合ってそうな。アニメを1話作る上での作業をまとめて管理し、ズレや問題、リテイクが生じたら即座に対処、各スタッフへの連絡と作業の再振り分けをしなければならない、と。
しかし、著者の舛本さんはこれを “その通り” と認めつつも、 “仕事として肝心な部分がまったく説明されていない” とも書いています。
料理でたとえると、「材料と調理手順と調理時間」は紹介されていますが、一番大切な「味や食感や温度」は紹介されていないようなものです。そして「おししさ」も!
この本では実際の制作進行という仕事を通してアニメ制作で一番大切な、「味や食感や温度」とその「おいしさ」を説明していきたいと思います。
僕ら読者は、言うなればその「つまみ食い」をさせてもらうような立場。“制作進行を知れば、アニメ制作を知れると言っても過言ではない”そうなので、興味のある人は、まず本書を手に取って読んでみることをおすすめします。
『アニメを仕事に!』導入部より。『キルラキル』*2で多用されたフォントですね。
アニメって、どうやって作っているの?
本書の目次とコンテンツは、以下のようになっています。
目次
- 第一章 熱意だけではだめ!狭き門をくぐるには
- 第二章 アニメ制作の番人 制作進行の仕事
- 第三章 地獄の新人研修
- 第四章 実践!制作進行
- 第五章 アニメ業界を目指す人へ
ざっくりまとめると、以下のような内容。
各章の内容
- 一章:アニメ業界の仕組みと現状、求められる人材
- 二章:制作進行の仕事内容と、覚えるべき「暗黙の実務」
- 三章:制作進行に必要な能力、教育方針
- 四章:アニメ制作の全工程の疑似体験と、「暗黙の実務」
- 五章:まとめと、アニメ業界で働くことについて
なかでも肝となるのは、第四章。本全体の203ページ中、96ページ分がこの章に割かれており、実際の資料や図も参照しつつ、アニメの制作工程を流れに沿ってまとめています。
おそらく、これすら全体の作業を表面的にまとめただけで、完全にまとめようとしたらとんでもないことになるんじゃなかろうか……。
本文第四章部分より。
絵コンテの解説。
設定資料の解説。
レイアウトの解説。
このような感じで各工程について説明しつつ、そこで制作進行が必要とされる立ち回り方を「暗黙の実務」として記しています。
筆者によれば、表面的な実務を覚えるだけなら3ヶ月〜半年程度で形にはなるそうですが、この “暗黙” の部分を把握するには3年、教えられるようになるまでは6年かかるとのこと。能力があればどうにかなる、というものでもなさそう。うへえ。
『SHIROBAKO』と合わせて読むと、おもしろい!
ぶっちゃけ僕は、設定資料集や絵コンテをたまーに見て、詳しい用語は分からずに「うほー」とか「すげー」とか言っているようなニワカのアニメ好き。ですが、この第四章部分も読んでいて非常におもしろかったです。
というのも、まだ現状では3話分しかありませんが、『SHIROBAKO』の内容と比較しながら読むと、用語や見どころが分かってきてめっちゃおもろいんですよ。「あ、この問題、進◯ゼミでやったところだ!」みたいな感覚。
みゃーもりがスケジュール&作業内容を確認している場面とか(第3話)、
「シミュレーションとのズレは2日なので……」と話す、先輩とデスクのやり取り*3だとか第3話)、
本田さんの「だれだー?こんな重い*4話数、制作1本目の新人に任せたのはー?」とか(第3話)。
本書を読んでから『SHIROBAKO』を観ても良いし、アニメを見てから『アニメを仕事に!』で復習しても楽しめると思います。
会社は違えど、アニメ制作における明確な共通点
監督のお腹をたぷたぷしたい(第1話)。
『アニメを仕事に!』の筆者である舛本さんは、TRIGGERの所属。
『SHIROBAKO』の制作は、P.A.WORKS*5。
どちらも「制作進行」について取り上げてはいるけれど、会社や個人によっても違いはあるのだろうし、これらの作品で描かれている、書かれている仕事は、もしかすると一面的なものでしかないなのかもしれない。
ただ、本書を読んだ後にアニメを観返したところ、驚くほどに同じことを言っている部分があって、この点に関しては真実なのかも、と考えさせられました。
「アニメは1人で作っているんじゃないんだよ?アニメ制作はチームワークなんだ」(第3話より)
当たり前と言えば、当たり前なのかもしれません。けれど、『アニメを仕事に!』の本文では、第五章の一番最後にこの点について言及されており、やはり何よりも大切なことなんじゃないか、と読んでいて感じました。
特に制作進行は、アニメ1話分のスタッフをまわしているときから、その話数における「チーム作り」を意識してください。
(中略)
制作進行は作業も多いし拘束時間も長い仕事です。軋轢や勘違いによって発生する作業は、なるべく少なくしたい。「チームを作る」ことによって無駄な作業は確実に減ります。出身地でも、今見てるアニメでも何でも構いません。スタッフ同士の共通点を探して共有してみることで場に会話が発生し、雰囲気がよくなります。ちょっとした気遣いが、廻り回って、あなた自身を助けてくれるのです。
激務だし、あらゆる能力が必要だし、直接的に褒められるような機会も少ない、大変な仕事なのでしょう。憧れはすれど、とても自分に務まるような仕事だとは思えません。
けれど、そこには「アニメが好き!」という大きな熱量が常に満ち満ちていて、クリエイターとしてぶつかることはあっても、共通の最終目標にチームで立ち向かうことができるという、大きな魅力をはらんでいるようにも感じました。
好きな人にとっては、たまらない場所なのだろう、とも。
今回は、本書『アニメを仕事に!』を読んで、アニメ『SHIROBAKO』も観て、その一端を「つまみ食い」させてもらった格好。
そこに入ることは叶わずとも、一人のアニメファンとして、これまで以上に応援したいと、そんな読後感を得ることのできる作品でした。少なくとも以降、スタッフロールの見方が変わるであろうことは、間違いない。
みゃーもりかわいい。いつも一生懸命で表情がコロコロ変わる女の子って魅力的だよね(第3話)。
©「SHIROBAKO」製作委員会