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ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

同人の“楽しさ”と“可能性”を紐解く本『CIRCLES' vol.0&1』

サブカルチャー サブカルチャー-同人誌

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 「同人」*1の楽しさを伝える同人情報誌サークル、Circles' Squareさんの、『CIRCLES' vol.0&1』を読みました。

 同人ショップでたびたび目にして、気になっていたサークルさんではあったのですが、なかなか手に取る機会がなく。この度、夏コミでようやっと手にすることが叶いました。やったー!

 

 最近は自分でブログを書くようになって、「なんかブログって、同人誌っぽくね?」なんてことを考えたり、多種多彩な創作系同人誌の魅力に気づき始めたり。

 改めて「同人ってなんぞ?」ということを整理したくなり、こちらを熟読しました。むちゃくちゃ面白かったです。

 

 

同人って、どうして面白いの?

 本書は3年前、2011年にCircles' Squareさんが発行した2冊の同人誌、“『CIRCLES' vol.0』と『CIRCLES' vol.1』の内容を加筆・修正・増補した総集編”という立ち位置の同人誌です。

 それも、単純に2冊をまとめただけのものではなく、3年前との違いをアップデートする意味での「赤入れ」を行なっているという親切設計。

 同人ショップの担当者、サークル主催者、ニュースサイトの管理人など、様々な方へのインタビューから「同人の可能性」を紐解きつつ、3年分の変化を読み取ることもできます。単なる“総集編”に留まらない、情報満載の一冊ですね。

 

Circles' Squareは同人はもっと楽しいということを様々な視点からお伝えしていく同人誌のサークルです。

このサークルについて : Circles' Square «サークルズスクエア»

 

 Circles' Squareさんは、一口に言えば、「『同人』の魅力を全力で伝えるサークル」。それも、作る人・読む人といった同人に関わる人から見た「好き」や「楽しい」を語るだけでは終わりません。

 同人の抱える課題や、商業との関わり、プラットフォームの変化、そして、同人をよりもっと楽しむための視点をも提供せんとする、“同人の案内人”とも呼べる取り組みをしているようです。メンバーは、シアン*2さんとかつゆー*3さんのお二人。

 

 その創刊号たる『CIRCLES' vol.0』と、続く『CIRCLES' vol.1』を合わせた、『CIRCLES' vol.0&1』。本書では、「同人の可能性」を大テーマとして、同人に携わる方々への4つのインタビューが掲載されています。

 日頃から同人誌を買っているファンの方はもちろん、「興味はあるけど、よく分からない……」という人にとっても気づきが多く、魅力の一端が伝わる内容となっているような印象を受けました。

 

 「同人ってなんぞ?」
 「なにが面白いの?」
 「どうやって楽しむの?」

 

 これらの疑問に対する答えを、それぞれのインタビューの内容から読み取ることができました。そう、そうなんです。このような世界が広がっているからこそ、同人は面白い。

 

COMIC ZIN:同人ショップの役割と、同人の不可能性

 ひとつめのコンテンツは、同人ショップCOMIC ZINの担当者さん、お二人へのインタビュー。

 同人と商業の境界、「委託書店」の立ち位置、ジャンルの取り扱い、ネットの普及による文化の変化、などなど、初っ端から話題が盛りだくさんの内容となっています。

 この2011年のインタビューの時点でも、創作ジャンルの多様化について触れられています。が、最近はそれがさらに細分化され、とんでもなくニッチな分野の作品が氾濫する、ひっじょーに混沌とした状況になっている印象。いいぞ、もっとやれ。

 

 お話の中にありましたが、「食」のジャンルはものっそい盛況ですね。はてなブログでも、「醤油手帖」さんが有名です。

 商業誌としても出版された酩酊女子(日本酒本は僕も持ってるよ!)など、お酒にまつわる作品は、先日の夏コミでも多く見受けられました。あとは、ラーメン本でも、二郎*4系に特化したサークルがあったりと、様々。ZINさんの店舗にも、置いてあるのを見たような記憶が。

 もちろん、即売会で発行されている同人誌の数に比べれば、委託店舗に置かれている作品は、ほんの一部に過ぎません。でもそれゆえに、掘り出し物を見つけたときの喜びや、自分たちしか知らないという“限定感”が強く働き、同人におけるひとつの魅力となっている、と。

 

 そのような中で、「同人における同人ショップの役割」とは、どのようなものなのか。

 

新しい作品との出会いのお手伝い

ビジネスと非ビジネスの境界領域にうまく位置をとって、どちらの可能性も極力殺さないように、バランスをとりつつ、作品を紹介していくこと

 

 実際に店舗で働くお二人は、このように考えている、とのことでした。特に、ビジネスと非ビジネスの境界という考え方は、ネットにおけるマネタイズ云々を見ていても感じるものなので、とても示唆的な視点であるように思えます。

 その上で、その境界にある委託店舗が考えるべき問題として、「同人の不可能性」という言葉が、非常に印象的なものでした。

 

同人で何が今、できないのか。そこには社会的な規制や、思想の行き詰まり、業界の内包する課題など、簡単には答えの出ないテーマがいくらでも出てくるのではないでしょうか。

 

 徹底的に「自由」 であり、「何でも出来る」特徴を持つ同人、だからこそ、「出来ないこと」を炙り出して考えることによって、その可能性を広げることができるのではないか。

 まだまだ、裾野が広がることが想像される、「同人」の世界。その可能性を潰さないためにも、同人に携わる一人一人が考えなくてはいけないテーマなのかもしれません。

 

アキバBlog:同人の魅力と強み、同人ならではの熱意

 同人誌を「読む人」側の視点としては、アキバBlog*5の管理人、geek*6さんへのインタビューも面白かったです。

 



 アキバBlogと言えば、同人誌に限らない、「管理人が見た秋葉原」を日々、更新し続けている大手ブログ。僕自身、数年前から日々購読させていただいていますが、このインタビューを読んで初めて、その成り立ちや考え方を知った格好です。ブログ運営の参考にもなりそう。

 ブログに関する話でひとつ、なるほど!と思ったのが、「記事にする・しないの大きな判断基準」について。弊ブログなんぞはその辺にすっ転がっている弱小ブログに過ぎませんが、本の感想を書くこともあるので、この話題には興味があります。というか、今、まさに書いていますしおすし。

 

自分が気に入って他の方にも紹介したいと思えるか、が第一ですが、記事にするしないの判断には一つ大きな考えがあって、それは「写真1枚で成立するかどうか」です。

(中略)

アキバBlogでは他の写真を補足や“+α”という位置づけにしているため、その1枚が記事の顔になります。私の思いを1枚の写真に込められるということは、私なりにその本の良さを理解できたということですから、読者の方にも本のことを伝えられる記事が作りやすいんです。

 

 その本が自分にとって魅力的なものであることが大前提。その上で、テーマ性や主張がはっきりとしており、それを1枚の写真で表現できるか否か、という点。

 これには、得心がいきます。本を紹介する基本骨子は文章ですが、そこに添える画像は、確かにいつも悩むもの。小説やビジネス書では表紙画像になりがちですが、何かしらテーマ性をずばーん!と伝えられる画像があれば……と思うことは少なくないので。

 また、「読む人」としての「同人」に対する諸々の意見も、共感のできるものでした。

 

――買い手側にとっての同人の魅力は何でしょうか?

 自分の知らないことを面白い切り口で教えてくれるところ、ですかね。たとえば、紅茶の同人誌で紅茶のおいしい淹れ方を学んだり、タバコの同人誌でタバコの銘柄を知ったり。自分が求めていたエ口いシチュエーションを見つけたり、ということもありますね。「今まで知る由もなかった新しい世界」を見せてくれる存在だと思うんです。

同人でヒットするものって、「一カ所のツボを刺激してくれるような本」だと思うんですよね。マッサージチェアじゃダメなんです。ピンポイントに執拗に一カ所を刺激してくれる、それが許されるのが同人ですし、それが受け入れられるのも同人だと思います。

 

 ほんまこれ。「そういうのもあるのか!」と驚きや気づきをもたらしてくれる存在であり、その多くは商業誌では知り得ないものばかり。

 断片的には説明されていても、ピンポイントで好き勝手に語りまくっているような作品は、商業誌においては稀有なんですよね。わかる、わかるんだけど、物足りない。そう、もっと、集中的にグリグリして欲しいんです。ハァハァ。

 

「好き」が伝わり、広まり、巡り巡る、「同人」の世界

 本書『CIRCLES' vol.0&1』には、あと2つのインタビューが収録されています。

 

 秋葉原の写真を撮り続けている、写真サークルworkshoprhythmsift*7さんが語る、秋葉原と同人の魅力、そして、変わるものと変わらないもの。

 本職は企画・宣伝系のお仕事をされているという中の人の「企画」に様々な人が集い、その化学反応によって独自のコンテンツを描き出す創作サークル、COSMIC FORGEさん。「企画」の勉強にもなり、とても魅力的に映ったので、ぜひチェックしたいところ。

 

 他にも、数点のミニコラムが掲載されており、ボリュームたっぷりの同人誌でございました。しかも、読み終えて「面白かった!」で終わり、ではなく、ネットのハイパーリンクのごとく、興味関心を他へと繋がる役割までも果たしてくれるものでした。

 取り上げられていたサークルさんのサイトは全て見に行きましたし、情報サイトとしてのアキバBlogの見方も変わりました。さらに、近々またCOMIC ZINに同人誌を探しに行こうと考えている自分もいます。……というか、既に創作系同人誌が部屋に増えてるよ!いつの間に!

 

 そんなこんなで、本書は「同人」を改めて考えるだけでなく、その世界観までも広めてくれるものとなりました。珍しく全力でべた褒めしてるけど、だって、本当に面白かったんだもの。

 Circles' Squareさんの作品は、既刊も含めて数冊一緒に買ったので、これから読み進めていくつもり。同人楽しい。同人誌とブログって、どちらも「熱量がパねえ!」的な意味で、似ているような気がするのよねー。はてなには同人誌作者さんが多い気がするけど、ブロガーさんもみんなもっと同人誌を作ればいいのに(ボソッ

 

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