本屋を巡るのは、楽しい。
立ち並ぶ本棚の間をぶらぶらと歩きまわるのが好き。
平積みされた新刊の表紙を眺めるのが好き。
五十音順に揃えられた背表紙を追いかけるのが好き。
気になった本を手にとって、ぱらぱらーっとページを捲るのが好き。
書店は、僕にとっては一種の「テーマパーク」なのです。
自然と足を運びたくなる場所
仕事を終えると、サラリーマンのみなさんは三々五々、各々が好きな場所、癒やされる場所へと散っていく。
お酒好きのお兄さんは、立ち飲み屋や行きつけのバーへ。野球好きのおじちゃんは、ナイター観戦へ。とにかくフィーバーしたい人は、ナイトクラブへ。
自分にとっての「本屋」とは、そのような「自然と足を運びたくなる場所」です。八百屋で野菜を買うとか、豆腐屋で豆腐を買うとか、単純にモノを買う場所とは少し意味合いが異なる感じ。
どちらかと言えば、ファッション好きの人にとってのアパレルショップ、もしくはステーショナリー雑貨が好きな人にとっての文房具専門店などに近いものかと。
単に「商品を買う場所」ではなく、その過程や雰囲気そのものも含めて、まとめて楽しめるような空間。どんなモノがあるか眺めて、探して、選ぶまでの流れ、すべてをひっくるめて、「本屋」というテーマパークのアトラクションであるような、そんなイメージ。
あらかじめ欲しいモノを決めておいて、店に着いたら店員さんに尋ねて、レジで購入し、最短時間で帰ってしまうのはもったいない。そもそも今はそんなことしなくても、Amazonでポチれば一瞬ですしね。
むしろ何の目的もなく、ぶらっと立ち寄って、本棚の合間を縫うようにゆっくりと歩き回りながら、ぼけーっと並ぶ本を眺めて、思わぬ「お宝」を探そうとする方が楽しい。
ネットやメディアで話題になるのはベストセラーばかりで、それ以外の書籍とはどうしても“出会う”のが難しい。驚くほどに凝った装丁の本や、聞いたことのない作者の物語、知る人ぞ知る隠れた名作などは、実際に見て、手にとって、開いてみないと分からない。
「Amazonでポチっとな」が当たり前となっている今、“自分にとって特別な本との出会いの場”として、リアル書店の価値は逆に高まっているように思います。
ただ本を買うだけじゃない、現代の魅力的な書店
全国の書店数が年々減っているという報道*1がある一方で、“本屋”に関する本や、“書店”の紹介本などがあったり、話題の本屋がメディアでも紹介されたりと、「書店」そのものについての話題はよく耳にするようになったと感じます。
その中でも特に話題に挙がるのが、いわゆる「サードプレイス」的な本屋さん。もしくは、書籍以外も取り扱う複合型書店。
ただ“本を売る“だけではなく、現代の新しい「居場所」として、心地良い空間や独特の読書体験を提供してくれる場所が増えつつあります。
代官山 蔦屋書店
例えば、代官山の蔦屋書店。広告宣伝を全く撃たず*2、3年前にこっそりとオープンしたにも関わらず、1年も経った頃には、毎週末はお客さんで店内がいっぱいになるくらいの盛況っぷりとなっていました。
多くの大人が口を揃えて、「心地が良い」と評する本屋さん。その特徴は、“大人のための文化の牙城”とサイトで書いているように、他の書店では見られない独自の品揃え。
店内のスタバで商品を読むことができたり、ラウンジで食事をすることもできたり。定期的にイベントも開催されており、本探しに限らない、様々な「体験」と魅力的な「空間」を提供してくれる書店です。
一時期は、片道2時間かけて、毎月2回ほど訪れるくらいにはお気に入りの場所となっていました。平日に代休を取って、昼前から夕方までぶらぶらーっと本を眺めたり、ジャズ・クラシックのCDをあさったり、なんともたまらぬ癒しの空間でござった……。
B&B
下北沢のB&Bも、独自性を持った本屋さんとして魅力的。
オープン当初は、“ビールの飲めるブックストア”的な文句をちらほらと見た覚えがありますが、いざ訪れてみると、それよりも内装がすっごく好みで興奮しました。
大小様々な本棚に、出版社も本のサイズもまちまちの状態で、ジャンルごとに多様な本が並べられている形。本の厚さも高さも違う背表紙が雑多に陳列されているようなものなので、どこか“我が家の本棚”っぽくも見える。
そのばらばら具合のせいか、なんとなく、一冊一冊が目に留まりやすいんですよね。
普通の本屋で本棚を眺める場合、文庫本は文庫本、雑誌は雑誌など、整然と同じサイズの本が並べられているので、何と言うか、飽きやすい。ざっと見て、目に留まった本があれば手に取るけれど、ばーっと見ては次、ざーっと見ては次と、どこか単調な作業のような。
その点、B&Bさんは本選びに集中しやすく、“お宝”が見つけやすいような印象があります。雑多と言ってもジャンルごとに分けられてはいるので、自分の関心のあるジャンルの本棚で「こんな本もあったのか!」と新しい出会いが起こりやすい。
学生時代にオープンしていれば、間違いなく通っていた本屋さんですわー。
考えるんじゃない、感じるんだ
他にも、先日行った、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERSや、BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿など、個性的な本屋さんはいっぱい。書店じゃないけど、来月オープン予定の、森の図書室も楽しみで行ってみたい。
そんな、本屋さんでの本の選び方は人それぞれだとは思うけれど、最終的には自分の感覚、フィーリングで決めちゃっていいんじゃないかしら。
あえてネット上のブックレビューは見ないで、「装丁がかっけー!」とか「帯の文句にビビっときた」とか「ざっと目を通して“買い”だと感じた」とか、そんなレベルでいいと思う。僕は、そんな感じで買ってます。で、買いすぎて積んでます、はい。
先人の感想を参考にすれば、“地雷”を踏む確率は減るかもしれないし、無駄な出費を抑えることもできるとは思います。けれど、結局は「自分がおもしろいと感じるかどうか」なので、周囲の評価に振り回されすぎるのも考えものかな―と。
書店に行って、本棚をパッと見て、ある本が目に留まって、ページを捲って、目に入った一文がビビっと来て。そこまで至ったのであれば、お財布と相談した上で、あとはもうレジへダッシュしちゃってもいいじゃない。勢いって大事。
もしくは、ダッシュの前にスマホを取り出して、Amazonにアクセスして、目的の本を探して、Kindle版が出てたらそっちをポチっと。うん、これでOK。
だ、だって、高確率でそっちの方が安いんだもん!表紙買い、装丁買いじゃない限りは、やっぱり電子書籍の方が楽なんだもん!セールにはいつもお世話になってます。
よし、今週末も、ぶらっと本屋さんに吸い込まれませう。うむ。