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ぐるりみち。

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“ぼくら”に寄り添う考え方を示した『ぼくらの未来のつくりかた』

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f:id:ornith:20140201125213j:plain2014/2/1開催「せんきょフェスティバル」@代々木公園

 

 家入一真さんの新著『ぼくらの未来のつくりかた』を読みました。

 

 

家入一真なう

かつてひきこもりだった経験から、「みんなの居場所をつくりたい」という思いで数々のビジネス、サービスを立ち上げてきた著者。

その思いを実現するべく出馬(そして落選)した東京都知事選を経て、この社会や政治の理想の未来像、そして「ぼくらの未来のつくりかた」が見えてきた。そのためのヒントと、これからの自身のヴィジョンを語りつくした1冊。「最新型の家入一真」の頭の中が、この中にぜんぶ詰まっています。

*1

 

 読み終えた実感としても、だいたいこの通りの内容。

 

 著者の作品を読むのは初めてなので、過去の著作との比較はできませんが、都知事選を経た、“現在の家入一真”さんの考え方、やりたいこと、そしてその方法論などが、コンパクトにまとめられた一冊となっております。

 

 僕自身は、都知事選に出馬する前の家入さんの印象といえば、「なんかたまに燃えてる(炎上的な意味で)起業家さん」というイメージしかなかったのですが。

 選挙活動を追いかけて、実際に渋谷駅前で話している姿を見て、「おもしろそうなことをやってるなー」と関心を持ちまして。話の内容も共感できる点が多く、その考えに触れてみたいという思いもあり、本書を買うに至りました。

 

 本の中で語られているのは、紹介にもあるように、「最新型の家入一真」。彼という一人の人間、もしくはその考えに興味のある人ならば、読んでみて損はないかと。

 

思考と社会のアップデート

 第1章は、選挙に出馬して分かったこと、実感したこと、試したことなどがまとめられており、都知事選のダイジェスト的な内容となっています。

 公職選挙法の問題点、ネット選挙で試したこと(クラウドファウンディング、ツイキャス、ぼくらの政策)、支持基盤がないことで「泡沫候補」扱いされた件について、などなど。

 

 そもそも僕が家入さんに興味を持ったのも、「選挙でおもしろそうなことをやっている」から。政治への関心はこれっぽっちもありませんでしたが、津田大介さんの著書『ウェブで政治を動かす!』を読んで、「ネット選挙」については気になっていたので。

 「この人なら、何か新しいことをやってくれるんじゃないか」という期待があり、その活動をそれとなーく追っかけておりました。その一連の流れが、1章では語られています。

 

 第2章は、「居場所」を キーワードにした、著者自身のやりたいこと、考え方の変遷について。この辺りの考えは、個人的には特に共感できるものだったので、首を縦に小刻みに振りながら読んでいました。壊れたお猿さん人形の如く。

 

 第3章は、選挙中にも各所から突っ込まれていた「ぼくら」という言葉について。曰く、“この社会の問題に対して当事者意識を抱き、積極的に関わっていこうという意志を持つすべての人”のことだそうです。

 

 第4章は、現代社会の問題点に関する突っ込み。なんでもかんでも是か非かで決める二元論。国や企業から“与えられる”ものになっている「居場所」。全ての人間が「頑張らないといけない社会」。

 高度経済成長期から続く、それら暗黙の「空気」に疑問を呈し、他人へのリスペクト、多様性を享受する社会へと「アップデート」していく必要がある、と説いています。

 

 第5、6章は、それまでの内容を考慮した上で、これからどのように行動し、社会をアップデートしていくかについて論じた内容。

 みんなが同じではなく、一人一人がマイノリティ、「個」として生きていくことが求められる中で、どのように「居場所」を確保していくか。そして、今、その瞬間だけを見るのではなく、数十年後まで見据えた、“ぼくらの未来のつくりかた”について。

 

「ぼくら」に寄り添う「考え方」を示した本

 僕の勝手なイメージかもしれませんが、起業家さんの著書というと、「成功者の成功体験」を書いたものが大半であるような印象があります。

 「私はこのようにして成功した」と。それは、ひとつの参考にはなるとは思うけれど、誰もが同じようにできるわけでもなく、「他人の物語」でしかないもの。そういう意味では、本書も同様に「家入一真の物語」でしかありません。

 

 しかし、そこに書かれているのは、「苦難を乗り越えて、最終的には成功したよ!」という輝かしい成功体験ではなく、「こんなこともありましたよー」という、ただの体験談

 そして、その内容も“成功者”の視点ではなく、「これからこうしたい!」という“挑戦者”の視点から語られたもの。僕にはそのように読めたので、著者が割と読者に近い立場であるように感じ、一種の親近感さえ覚えました。

 

 ただ、それゆえに、断定文は少なめ。「こうした方がいいんじゃね?」という提案の格好が多いので、全体を通して見ると、人によっては曖昧な、ふわふわした論調に読めるかもしれません。どこか煮え切らない感じは、確かにあるんじゃないかと。

 でもだからこそ、そういう著者の人柄があってこそ、選挙活動であれだけの賛同者を集めたと考えれば、得心がいくように思う。今の社会を、今の自分をどげんかせんといかんと考えている「ぼくら」に寄り添い、考え方を示してくれる人。なんとも、不思議な読後感を覚える一冊でした。

 

 

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*1:裏表紙より引用。