【艦これ】二次創作の視点から見た、「ケッコンカッコカリ」について


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 全国の提督が待ち望んでいたであろう、「ケッコンカッコカリ」が実装されて、はや4日。演習相手の艦隊を見ても、銀色に輝く指輪を目にする割合が増えてきたし、当たり前のように重婚している強者もいらっしゃる。うらやまし……くなんかないもん! 榛名がいれば大丈夫です! もん!

 そんな「ケッコンカッコカリ」に関して、思うところがある提督さんも少なからずいらっしゃるようで、一部で話題となっていた。僕自身は、ゲームはゲームと割り切って純粋に楽しんでいるので、その賛否について語る言葉は持っていない。

 ただ、「二次創作」の視点で見ると、割とおもしろいものなんじゃないかなー……と思ったので、考えたことを書いてみます。

 

「ケッコンカッコカリ」ってなんぞ?

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僕らの間では「ケッコンカッコカリ」と呼んでいますが,いわゆる“限界突破”的なもので,もう少し先のフェイズに艦娘と行けるようなシステムですね。レベルを1に戻したりするのではなく,今よりもさらに育てていけるシステムです。

「艦隊これくしょん -艦これ-」はいかにして生み出されたのか。その思想から今後のアップデートまで,角川ゲームスの田中謙介氏に語ってもらった - 4Gamer.net

 

 公式の発言によれば、「ケッコンカッコカリ」は、「レベルの限界突破」が可能になるシステムであることが明言されている。言わば、他のオンラインゲームでも見られるような、それまでのレベルの上限を引き上げるアップデートと同様のものだ。

 ただし、『艦これ』の場合は、それに特別なアイテムと作業(クエスト)が必要となる。さらに、そのアイテムは、現時点ではゲーム内でひとつしか手に入らず、他のユニットにも適用しようとすると、課金が必要になってくるという縛りがある。この点が、一部ユーザーの反感を買っているようだ*2

 

 「ケッコンカッコカリ」が特徴的なのは、ただのアップデートである「システム」に固有の名称を付け、イベントまで用意したことにある。しかも、「ケッコン」である。

 「ケッコン」だと!?ひええー!そいつはもちろん、「結婚」のことだよな?大好きな艦娘といちゃこら新婚生活とかひゃっはー!最高デース!!……などと、全国の提督さんたちが色めき立つのも仕方がない。

 

 確かに、実装された「ケッコンカッコカリ」を紐解いてみれば、書類に指輪、どう見てもあの「結婚」じゃないかー!と思わせる独特な演出になっているし、デレデレの追加ボイスまでついてくる*3。まるでギャルゲーっぽい?

 しかし、言ってしまえば、それだけである。ギャルゲーみたいだからと言って、別にアドベンチャーパートが追加されたわけでもなければ、新規の一枚絵がどーん!と出てくるわけでもない。メインはレベルの「限定解除」であり、ボイスとイベントはおまけのようなもの。そう言っても、間違いではないと思う。

 そんな、ただのシステムアップデートと言えなくもない「ケッコンカッコカリ」。でも、このシステムに「ケッコン」という名前をつけて、「簡単な」イベントを用意した運営さんは、かなりうまいことやったんじゃないかなー、と思った。ユーザーにとっての新しい「話題」としても、二次創作の「種」としても。

 

「カッコカリ」の曖昧さを考える

 以前、このような記事を書いた。『艦これ』人気を、『東方』や『アイマス』といった他の作品と絡めて、自分なりに考察してみたもの。形のあるデータなどを参照したわけではないので、「多分、こうなんじゃね?」という想像語りに過ぎませんが。

 

 この記事の中で、『艦これ』の魅力のひとつとして、正体不明の「深海棲艦」や、公式で規定されていない世界観を挙げました。

  『艦これ』では、「深海棲艦」と呼ばれる敵艦と戦うことになるが、その正体は公式に明かされていない。どこか不気味な風体で、強力な深海棲艦は女性の容貌をしていることから、「轟沈した艦娘の成れの果てなのでは…?」という説がまことしやかに流れているが、その真偽も不明。既存の艦娘との共通点が見られたり、イベント時の台詞が意味深だったりと、不気味ではあるが、魅力的な存在だ。

 

 そのような、曖昧で不気味、いくらでも解釈ができる「敵」の存在は、二次創作に多様性をもたらしている。深海棲艦に限らず、そもそもの「艦娘」という存在の詳細な設定、果ては『艦これ』の世界観すら明言されていないこともあり、創作者によって、全く違った話が展開されているため、非常におもしろい。

なぜ『艦これ』の同人誌は人気なの?二次創作を盛り上げる要素を考えてみた

 

 言うなれば、『艦これ』は「未確定」の世界観を擁している。ゲームをプレイしている中で、「仲間」と「敵」の存在ははっきりとしており、進め方も理解はできるが、その背景はほとんど明らかにされていない。そんな、「なんかよく分からないけど惹かれる」という「曖昧さ」が、『艦これ』の魅力の一翼を担っていると僕は思う。

 そして、その「曖昧さ」は、今回の「ケッコンカッコカリ」にも適用されているのではないだろうか。

 「ケッコンカッコカリ」は、書類や指輪、イベント時の演出など、僕らが一般的に知っている「結婚」の形を持っているように見える。そもそものシステム名が、「ケッコン」だしね。艦娘のデレっぷりからしても、「あ〜こいつは特別なもんですわ〜」ということがよく分かる。

 

 しかし、一連のイベントを見てみると、具体的に「どうした」ということはゲーム内でも、運営側からも明言されていない。それっぽい言葉と言えば、「艦娘と絆を結びました」という文句のみだ。

 これは、非常にふわふわした、曖昧な表現だ。一口に2者間で結ばれる「絆」と言っても、夫婦、親友、師弟、などなど、様々。もしかしたら、ブラ鎮*4の長たる提督と正規雇用の関係を結んだだけかもしれない。おらぁ、そんな鎮守府やだぁ。

 

 つまり、この「ケッコンカッコカリ」は、僕らが知っている「結婚」とは全く別のものである可能性がある。カタカナ表示に加えて、「カッコカリ」という言葉がさらにその曖昧さを加速させている。「結婚」という概念が全く違う意味合いを持っているかもしれないし、一夫多妻性が認められている世界なのかもしれない。夢が溢れりんぐ。

 そして、そんな曖昧な「ケッコンカッコカリ」は、前述の「深海棲艦」や世界観と相まって、二次創作界隈に多種多様な「妄想」を運び込むことになるんじゃないだろうか。

 

「曖昧」な世界がもたらす「妄想」

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 世界観や設定が曖昧な作品は、その二次創作活動も活発になりやすい傾向があるように思う。前述の引用記事にも書いたように、『艦これ』や『東方』など。

 つまり、最低限の「キャラ」や「システム」という具材をもとに、どのように料理(解釈)するかは、各々の自由、ということでもある。ゆえに、それはクリエイター独自の視点で物語を作りやすいということでもあり、二次創作界隈では好まれやすく、盛り上がりがちな印象がある。

 今回の「ケッコンカッコカリ」に関しても、Twitterで探すだけで、これだけの「妄想」が飛び交っている。

 

 

 ちょろっとTwitterを見ただけでも、これだけの「解釈」があるのだから、クリエイターの方たちは、きっと今頃は新作の構想を練っていることだと思う。

 「二次創作?知らない子ですね」な人にとっては、「何言ってんだこいつら」としか映らないかもしれない。けれど、作品から何かを想像、いや、妄想するのが好きな人にとっては、多様な解釈が可能な設定はたまらない。いいねぇ、しびれるねぇ……!

 昨今のオタク市場を見ると、「二次創作の盛り上がり」がそのまま、「作品の人気」と直結していることは否めない。そういう意味で、この「ケッコンカッコカリ」は、艦これユーザーの間に蒔かれた、新しい「種」となりうるものだと思う。クリエイターがそれを各々の自由に育て、収穫し、ファンが消費する。そのようなサイクルが続く限り、作品の人気がすぐに下火となるような事態はないはずだ。

 ……と、ぼそぼそと書いてきたけれど、要は楽しめるものは積極的に楽しんでいこうぜ!って話でございます。今のところ、個人的には課金の予定はないけれど、いつまでもつか。時雨かわいいです。

 

 

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*1:嫁。

*2:もともと運営が「無課金」を推奨するようなゲームであったため、「裏切られた」と感じてしまう人もいるのだろう

*3:嫁の艦娘がデレてくれなくて、絶望した提督さんもいらっしゃったようですが……。

*4:ブラック鎮守府

*5:うちの娘達。かわゆい。