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『ルールを変える思考法』熱き廃ゲーマーたちの宴

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photo by fumi

 Kindle本のセールで真っ先に目に留まり購入したのが、川上量生さんの著作、『ルールを変える思考法』。ニコニコ動画でおなじみ、株式会社ドワンゴの会長さんでございます。

 本書は、4Gamer.netの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」という連載を元に執筆されたそうで、彼の「ゲーム」に対する思い入れや、ゲーム廃人の社員たちとの対談がメインの内容となっている。

 いや、もちろん、ビジネスにおける思考法や、コンテンツ業界、インターネットの将来の話なども盛り込まれているのだけれど、あまりにゲーマーとしての廃人トークがおもしろかったので。そんな本書を、簡単にご紹介。

 

「自分で考える」ゲームをしよう

  1. 人間が、コンピュータの決めたルールに従ってゲームをプレイする
  2. 反射的な思考能力の速さを競うゲームがほとんどである
  3. コンピューター相手にゲームをやっても人間との付き合い方は学べない

 

 川上さんによれば、これら3つが、テレビゲームの致命的な欠点だという。そのような、シングルプレイのゲームをやり込む人は、ひたすら効率重視のプレイングを行なっており、逆に、対人戦が強いタイプのゲーマーは、「いかに相手を出し抜くか」を日々考えている、とのことだ。

 そのような、「自分で考えながらするゲーム」は、思考のフレームワークを鍛える訓練にもなる。攻略のために何時間、あるいは何日もかけて、様々な角度から、どんな手を打つのが有効であるかを考えぬく時間を持つこと。

 入試問題などにしても、「知っているかどうか」を前提とした知識の詰め込みを基準としているため、そのような「思考のトレーニング」をする機会が減ってしまっていると、川上さんは書いている。ゆえに、戦略を要するゲームは、ある面においては思考を鍛えるのに効果的だということだ。

 

 本書では、このように著者が「考えながらプレイしてきたゲーム」として、アナログゲームと、オンラインゲームの話がたびたび出てくる。両ゲームの経験が少ない僕にとっては、「そんな世界もあるのか!」と思える内容だった。

 自分がプレイしたことのある戦略系ゲームを強いて挙げるとすれば、『三国志NET』『Fantasy Earth ZERO』くらいだろうか。どちらにも「軍師」的な役割を持ったプレイヤーが存在しており、戦略を決定し、次々と指示を出していく様子は、さながらひとつの組織の長であるように見えた。

 

 しかし、オンラインゲームの多くは、あらかじめシステムと運営によって、ルールが決められているものが大半だ。著者の言う「思考法」とは、前提となるルールの中で戦うものではなく、ルールそのものを変える考え方のことである。

 ビジネスにおいても、ゲームと同じく、勝つための最前提として「ルールの検証」を第一に始めるのが良いという。その時のルールを確認・検証した上で、最適解を探すこと。「変えるべきルール」を見つけ出し、自分たちが勝つルールに作り変えること。そのための考え方を、実際のゲーム、ビジネスと照らしあわせて説明したものが、本書のメイントピックと言えるだろう。

 

曖昧な存在である「コンテンツ」が人を動かす

 他方では、ドワンゴの代表的サービスであるニコニコ動画と、それと付随したコンテンツの話も書かれており、関心のある人にとっては、興味深い内容となっている。

 

 「コンテンツとは、わかりそうで、わからないものである」

 

 これが、著者の話す「コンテンツ」の定義だ。「知っているもののような気がするけど、何かか違う。現実のようでちょっと現実じゃない――」そんな曖昧なものがコンテンツであり、人間には、「わかりそうでわからないことが気になって興味を持つ」本能があるからこそ、コンテンツに惹かれるのではないか、という。

 この定義は、僕にとっても、非常に納得のできるものだ。人は、自分の知らないものに関心を持ち、時に心揺さぶられる。その人にとって当たり前なもの、日常的なものでは、そのような感覚は持ち得ない。

 絵画にせよ、音楽にせよ、物語にせよ、それが自分の知らない「何か」をはらんでおり、新鮮さをもたらしてくれるからこそ、感情が動かされるのだろう。そう考えると、「わかりそうでわからない」コンテンツに惹かれ、それを理解した時点で、また別のものに関心が移っていくというコンテンツ消費の流れも、得心のいくものとなる。

 

廃ゲーマーたちの宴

 さて、本書の一番の魅力と言ってもいい部分が、第5章。川上さんと、ゲーマーである社員2人を合わせた3人による鼎談となっている。章のタイトルは「ゲームがうまい人間は頭がいいのか」となっているが、その内容は廃人ゲーマーたちによるガチトークだ。

 

 例えば、目次で5章の内容を見ると、次のような文字が踊っている。 

  • ログインして最初にやるのは「人を殴ること」だった
  • ゲームのリアリティは、ときに「罪悪感」さえ抱かせる
  • 「命乞い」にはプレイヤーのセンスが垣間見える
  • ルールの抜け穴が見つかればすぐ行動!

 

 すごく…フリーダムです…。

 

 僕にとっては、タイトルすら知らないゲームがぽんぽん出てくるが、それにしてもやっていることが自由過ぎて、かつ楽しそうで、羨ましくすら思えるレベル。

 ゲームと言うと、世間的には頭が悪くなるだのゲーム脳だのと言われているが、「あれ?むしろゲーマーって、とんでもなく賢いんじゃね?」と思わせてくれる内容だ。というか、実際、そうなのだろう。

 本書は「ビジネス書」という括りではあるが、おそらく、学生でも気軽に読めるだろう、非常に分かりやすい内容となっている。前述の内容だけでなく、著者の思考法、経営戦略などが実際の経験に基づいて語られており、ニコニコ動画の誕生と運営の経緯も書かれているため、同サービスが好きな人にとっても、刺激的な本となり得るだろう。

 

 

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