たまには青臭い「青春モノ」に触れてみたい


 いわゆる、「青春モノ」と呼ばれるジャンルの作品が、昔から大好きです。

 

 それこそもう、青臭さ全開でできているようなやつ。大げんかした2人が、夕陽に染まる河原で殴りあってお互いボコボコになりつつ、最後には並んで寝そべって、「やるじゃねえか」「お前こそ」と笑い合って友情を確かめ合う感じ。

 たまらん。そういえば、もはやテンプレと化した、この「夕方の河原で殴り合い」の元ネタってなんなんでしゃろ。

 同じく、どろどろの人間関係を含んだ青春モノも好物です。恋愛系。親友と同じ相手を好きになっちゃって、うわあもうこれどうしよう裏切れないけど裏切っちゃってきゃはー☆みたいな。と言っても、結末までどろどろなのは勘弁。ちゃんと決着はつけないと。後味悪くても。

 そんな、思春期の少年少女の不安定な心の機微とか、登場人物の内面の不快ところまで踏み込みつつ、その人間関係のぎくしゃくを描いたような作品が、僕は好き。そこに、自分の黒歴史と似た成分が含まれていれば、なお良い。身体ひん曲げてぐおおおおおとか叫んじゃってもいいのだ。

 

 というわけで、媒体ごとにパッと浮かんだ、僕の好きな「青春モノ」を挙げてみました。小説、漫画、映画、アニメからそれぞれ1作品ずつ。マイナーはないです。

 

小説『カラフル』 /森絵都

あらすじ

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。

 僕らの世代で、森絵都さんの作品を読んでいる人はかなり多いと思う。一応は「児童向け」小説の体で出されてはいるけれど、3年前、アニメ映画の公開に合わせて読みなおしてみたら、やっぱりおもしろかった。何歳になっても楽しめる。

 僕らは小さな頃から、「こうありなさい」「そうしなさい」と言われて育つ。もちろん、親や先生によるけれど。そして、そう言われて育つと、自分でも「こうあるべき」「そうしなきゃいけない」と思いこんでしまう。本当にそれが正しいの?

 そうやって、自分で自分の「色」を決めてしまうのはもったいない。人の見方によって、自分の受け取り方によって見え方は変わってくるんだから、白か黒かで判断することはないんだ。カラフルでいいじゃないか。そう思わせてくれる作品。

 自殺だとか、生死だとか、子供にとってはなかなか重いテーマのはずなのに、力を入れずに気持ちよく読むことができる、名作だと思う。

 

漫画『君に届け』 /椎名軽穂

あらすじ

舞台は北海道。北幌高校に入学した黒沼爽子は、陰気で見た目が暗く、周りからは「貞子」と呼ばれ、クラスに馴染めないでいた。しかし、クラスメイトの風早翔太や吉田千鶴、矢野あやねなどの協力を得て、周囲の誤解を解き、友情・恋愛などを通して成長していく。

 青春漫画なんて腐るほどあるけれど、この前のKindleの無料キャンペーンで読みなおしたばかりのこちらが思い浮かんだので。

 もう語ることはただひとつですよ。風早くんかっけー!あんな爽やかボーイがいてたまるかー!でもきっといるんだろう!なぜならかっこいいから!男の僕でもキュンキュンしちゃうんだから、そりゃあもうふおおおぉぉぉぉおおおですよ!ふおおおぉぉぉぉおおお!!抱いて!!!!

 少女漫画はあまり数読んだことはないけれど、今のところ「これはない!」という作品に当たったことがないです。ということは、少女漫画は肌に合うんだろう。たぶん。あれ、ガラスの仮面どこまで読んだっけ。

 

映画『ウォーターボーイズ』/矢口史靖

あらすじ

無気力な日々を過ごしていた高校生の鈴木たちは、新任女教師の色気に乗せられて、男たちのシンクロナイズド・スイミングをやらされる羽目になる。恥ずかしさと難しさが共存する中、彼らは秋の文化祭に向け、夏休みにイルカの調教師から猛特訓を受けるのだが…。

 ドラマ化にスペシャル版に諸々の特集と、爆発的にヒットしていた記憶が(ドラマの評判はともかく)。男子シンクロナイズドスイミングブームの火付け役。埼玉の男子中学生は皆、川越高校を目指した。僕は落ちました。

 何が良いって、主要キャラクターがみんな魅力的。濃すぎるんじゃないかってくらいにキャラが立ってる。そんな彼らが、協力したり、失敗したり、ばらばらになったり、トラブルに立ち向かったりと、見ていて本当に飽きない。ギャグシーンも多いしね。竹中直人さんはちょっと落ち着いて下さい。

 シルヴィ・ヴァルタンの「あなたのとりこ」を聞いて、「あ!ウォーターボーイズだ!」となるか、「お茶のCMだ!」となるか。

 

アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 /長井龍雪、岡田麿里

あらすじ

昔は仲良しだった幼馴染たち。でも、高校生になった彼らの距離はいつの間にか離れてしまっていた。ヒキコモリぎみの主人公"じんたん"。ギャル友達に流され気味の"あなる"。進学校に通う"ゆきあつ"と"つるこ"。高校に進学せず旅を重ねる"ぽっぽ"。そして、仲良しだった小学生の頃から、それぞれが変わっていく中で変わらない少女"めんま"。ある日、"お願いを叶えて欲しい"とじんたんにお願いをするめんま。困りながらも"めんまのお願い"を探るじんたん。そのめんまの願い事がきっかけとなり、それぞれの領域でそれぞれの生活を送っていた幼馴染達は再びかつてのように集まり始める。

 映画化もされ、各メディアでも取り上げられ、特に西武線では長く宣伝されていたこともあり、普段はアニメを観ない層にもそこそこ広まったらしい、『あの花。』。

 ファンに聞けば、「このシーンもあのシーンも泣ける!」と語るに事欠かないが、何と言っても1話エンディングのインパクトっすよ。「君と夏の終わり~♪」が流れた途端にあぎゃあああああああ!!となったZONE世代は、あの1分ほどで全てを持っていかれたはず。あれは、演出と相まってマジでズルい。

 世代ドンピシャの懐かしネタ・あるあるネタに、疎遠になった幼なじみが集まっていく過程、一方通行の恋心にもにょって、諦めきれなくて、でもみんな一緒がよくて、最後は大団円。うん、青春って、いいね!

 


 

 そんなこんなで、今も昔も、観て読んで楽しい、青春作品でした。

 ――そういえば、挙げた作品のどれにも、「夕方の河原で殴り合い」も「どろどろ恋愛系」の要素もなかったような。あれあれ?

 

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