映画『言の葉の庭』感想|雨と、本と、ビールと、ピアノ。


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 「サントリーのステマか!」とでも言いたくなるくらい、金麦がおいしそうに描かれていたので、思わず買ってしまいました。そんな作品。

 ちょっと遅くなったけど、水曜日に観て来ました。新海誠監督の最新作、『言の葉の庭』。『秒速5センチメートル』からのファンとしては、「うひょー!もうたまんねえぜー!」という内容でした。

 

 新海さんの作品と言えば、とにかく美しい背景、そして悲恋といった印象を持つ人も少なくないと思います。「『秒速~』を観て何かもう切なくて落ち込んだ……」なんて感想はよく見かけますもんね。

 

 「新海さんの映像の何がいいの?」って初めて聞かれた時は、自分でも「あれ?なんだろう?」と考えもしましたが、何十回も『秒速~』を観返してきた今なら、僕はこう答えます。「あの空気感がいいんですよ!」と。

 

 美しくも、どこか切なげな風景。学生時代の、言葉に表せない感情や葛藤。登場人物のモノローグ。そこに加わる、天門さんによる澄み切ったピアノの旋律。

 何ともふわっとした表現ですが、僕はその”空気感”がたまらなーく好きです。映像がきれいだから、音楽が好みだから、ストーリーに共感したから。そのどれでもなくて、その全部が合わさっているから好きなんです。うーん、なんか説明しにくい。

 

 前置きが長くなりましたが、今作の『言の葉の庭』も、そんな"空気感”がとっても素晴らしい作品でありました。

 

 まず感じたのが、メインキャスト2人のしっくり感。思っていた以上にぴったりでうおおおおってなりました。他作品で聞き慣れた声だったけど、ここまで合うか!と。

 

 特に入野自由さん。キャラが話している時の演技と、モノローグの時の演技の差。モノローグでも淡々と話すんじゃなくて、掠れた感じの、感情がこもった声でぞくぞくしました。そしてラスト。予告にもあった、「あんたはそうやって~」のところでガツンとやられましたよ。

 そして、花澤香菜さん。ぶっちゃけ最初は、「27歳の女性ってイメージではないなー」と思っていたのですが、聞いてみたら、いいじゃないですか!どこか幼さを残した大人の女性、って感じで良かったです。ヒロインの方が自分と年齢が近いこともあり、自然と感情移入していまいました。

 

 映像美に関しては言うまでもありませんが、作中に登場するいろいろな「雨」が本当にきれい。それこそ、鑑賞後に「雨降らないかな―」と考えてしまうくらい。だが、その後降ってくれないし。

 

 あと、印象的だったのは音楽。新海さんの作品と言えば、天門さんの作曲によるBGMがおなじみでしたが、今作の担当は柏大輔さん。

 当初は天門さんじゃないのかー、残念だなー、と思っていましたが、上映中、気付けば惹きこまれていた僕がいる。しばらくは、メインテーマの旋律が耳から離れそうにない。文字通り、雨のように降り注ぐようなピアノの音色が心地良い。

 

 それらの要素が組み合わさった上で、展開されるストーリーがまた、切なくてたまらんのです!

 ネタバレになるので明言は避けますが、これまでの新海さんの作品らしい内容でありながら、おっ?と思わせる展開ですごく楽しめました。胸も締め付けられたけど。それもまた良いのです!

 

 実生活では、梅雨に入ったくせになかなか雨が降らない日々。僕にとっても、雨は基本的には気分の良いものではないけれど、今ならちょっと違った雨の日を迎えられそうです。

 しとしとと雨の降る梅雨の休日には、ビールを片手に、雨音とピアノの音色を聴きながら、読書をしたりなんかして。僕は!作品に!浸りたい!!

 

 

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