音の表現に惚れた!和楽器ガールズバンド漫画『なでしこドレミソラ』感想

 なでしこドレミソラ 1巻 感想1

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.154より

 「バンドもの」としては、過去最高の導入でござった……!

 本書を見つけたのは、某アニメ系書店をぶらついていたときのこと。その帯に書かれた「和」の文字を見て、元・和太鼓マンとしての血が騒ぎ、珍しくそのままジャケ買い(Kindleで)してしまった。ひと目で、尋常じゃないバンドものだと見抜いたよ。

 何の前知識もなく読み始めてみれば──嗚呼、素晴らしき哉、和楽器バンド。バンドものならではの、楽器と相対したときの胸の高ぶりは言うに及ばず、独特の「音」の表現が本当にきれいで好み。キャラクターもみんなかわいらしく、そして、何かに挑戦する女の子はカッコいい。

 一口に言えば……そう、 “雅(みやび)かわいい” 。

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1から始める、正統派・和楽器ガールズバンド!

 『なでしこドレミソラ』を一言でまとめるなら、「和楽器ガールズバンド漫画」……になるのかな。

 おなじみの「バンドもの」であり、「部活もの」であり──そして、意外と数の少ない「和楽器もの」のマンガでございます。

 「和」の要素が強い部活マンガとしては『ハナヤマタ』などがパッと思い浮かぶものの、和楽器の “バンド” となると話は別。少し前に読んだ『弁天ロックゆう。』はバンドものだけど、あちらは “和の要素もある” バンドという感じなので、ちょっとまた方向性が違うかしら。

 なでしこドレミソラ 1巻 感想2

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.10より

 さて、本作の主人公は、高校1年生の音古間美弥(ねこまみや)

 パッと見たかぎりでは金髪ギャルっぽくもありますが、中学のクラス文集のランキングで「クラスで一番地味」「真面目でお堅そう」「遊んでなさそう」の3冠を達成するほどの地味っ娘である。

 「脱・地味&普通!」を目指して、高校では大幅にイメチェン。軽音楽部の見学に行くも、かえって周囲との温度差を感じてしまい意気消沈。

 自分が夢中になれるものはないのかな……と落ち込んでいたところ、聞こえてきたのが、同級生の竹海陽夜(たけみひよ)が奏でる尺八の音色だった。

 なでしこドレミソラ 1巻 感想3

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.34より

 陽夜に手を引かれるがまま、和楽器バンドのライブに連れて行かれた美弥。

 そこで目にしたのは、多彩な和楽器によって奏で織り紡がれる、極彩色の音の奔流。その豊かな音の彩りに魅了された美弥は、陽夜とともに和楽器を始めることを決意するのだった──と。

 ド直球の王道展開ではありますが、自分にとって身近な「和楽器」をテーマをしていることもあって、当時のわくわくを思いだしながら読めました。この全身を揺さぶられる感じ、わかるわ。

 というか、「文集のランキング」からして共感してしもた。

 僕の場合は「真面目」に加えて、「宇宙人と友達っぽい」でもナンバーワンだったし、そりゃあ地球人として高校デビューしたくもなる。そういった背景も含めて、こんなに劇的ではなかったけど、「和楽器」から高校生活を始めた部分とかもう自分と被りすぎて、「ホワアアアアアアア!!」ってなってた。ホワアアアアアアア!! って。

舞い、流れ、咲き、波紋のように響き奏でられる「音」のイメージ

 美弥は三味線、陽夜は尺八。そして1巻後半ではも登場し、劇中でさまざまに奏でられる和楽器の音々。

 時に演奏動画で、時に練習で、時に日常のワンシーンで響きわたる音の表現が、本作は独特かつ美しいものになっており、それがまた大きな魅力となっています。

 なでしこドレミソラ 1巻 感想4

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.56より

 市松、菱菊、格子、青海波──などなど、多種多彩に描かれた和柄・文様は本当に色とりどり。

 そう、描かれているのはマンガの白黒ページであるにも関わらず、 “色とりどり” と形容したくなるほどに豊かな和柄が作品を彩り、和楽器の「音」のイメージを伝えてくれるのです。

 なでしこドレミソラ 1巻 感想5

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.32より

 三味線は花を咲かせるように。
 尺八は風が吹き抜けるように。
 琴は水面に波紋を広げるように。

 楽器によって異なる「音」の表現は、その音階・強弱・呼吸までをも伝えてくれるかのようでドキドキする。

 ほとんどの演奏シーンでは、他の音楽マンガで見られる擬音や文字を使わず、集中線すらなるべく排除して「音」を描いているように見えてすごい。打楽器である和太鼓も含めて。

 なでしこドレミソラ 1巻 感想6

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.170より

 奏者が替われば、「音」もまた変わる。

 プロバンドの演奏は豪華絢爛、 “スーパー花鳥風月タイム” と言わんばかりの描き込みによって表現されているのに対して、メイン2人の演奏はまた別の「音」で描かれているように見える。

 経験者である陽夜の尺八の音色は流れ揺蕩うような曲線となっている一方、初心者の美弥が奏でる三味線は少しささくれ立っており、線の広狭も不安定。

 それでも2色の音は織り混ざり、聴く人の間を流れるように響いていく。単純なようでいて、繊細にも映るこれら表現が大好きです。

バンドメンバーがそろったとき、どのような「音」が見られるのか

 なでしこドレミソラ 1巻 感想7

みやびあきの『なでしこドレミソラ』(1) P.154より

 1巻ということもあって、物語は始まったばかり。

 まだバンドメンバーを集めつつ、主要キャラクターを徐々に掘り下げていっている段階なので、メンバーがそろって「いざ演奏!」となったときにどのような「音」の奔流を見ることができるのか──今から、楽しみでなりません。

 あと表現もそうですが、みやびあきの@Mi_akinoさんの描くキャラがまたかわいいんですよ!

 美弥ちゃんもいいけど、陽夜ちゃんのちょこまか動く感じが好き。しかも転勤族の属性持ちとか、余計に感情移入してまうやん……。そうなのよ…… “知らない天井” の不安感には、音楽が心の支えなのよ……。

 高校時代、和太鼓に打ち込んでいた身としては、「和太鼓女子はまだかー!」と期待しつつ、続刊を楽しみに待とうという心持ち。和楽器好きゆえの補正もあると思いますが、音楽マンガが好きな人にこそおすすめしたい作品です。

 

©みやびあきの/芳文社

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本田『ガイコツ書店員 本田さん』(1) P.30

なるほど。

 

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